地方移住をするということ

2019年10月に都内から尾鷲市三木里町に引越しをし、台風と集中豪雨の洗礼を受けたことを前回お話ししました。
今回は、縁もゆかりもない土地に移住をする細かなあれやこれやについてまとめておこうと思います。

離れた場所に引っ越すということ

ある意味東京で生活していると、電車は2分間隔で時間通りに来るし、バス便も何路線もある。流しのタクシーだってバンバン走ってて、手をあげれば乗せてくれる。そんな場所からはるばる紀伊半島の東側、海と山のかすかな隙間に張り付くように民家が並ぶ、いわゆる僻地にやってきました。空き時間が出ないように時刻表を確認し、スムーズな乗り継ぎに成功すると関東から紀伊半島の東側に6時間でたどり着きます。車で移動してもほぼ同じ時間です。
僻地といいましたが、その交通インフラの悪さが地域の文化を守ってくれたのではないかと密かに思っています。
管理人は、埼玉県の入口で生まれ、二十歳を過ぎてからほぼ東京都目黒区の中で転々としていました。子どもをもうけ、息子が小学校の低学年の頃、自然の中で暮らすことも知っていてほしいと神奈川県鎌倉市に3年余り住んだこともありました。
子育て時期と仕事に集中しなければいけない時期が重なったため、またもや目黒区に舞い戻り、その後、三重県尾鷲市に移住するまで12年間東京都世田谷区で暮らしていました。
そうなんです。最高に遠い引越しが目黒区から鎌倉市です。車で1時間ちょっとの距離なんです。なので、引越しの移動が1日で済まないことなんてなかったんです。
ところが、紀伊半島に引っ越すとなると引越し便のトラックに荷物を積み込んだ後、引越し先で荷受けするのは確実に翌日となります。下手をすると引越し便のトラックに自分が間に合わないという事態もあり得るのです。
引越しは、このご時世ネットを開けば迷うほどの比較サイトにヒットします。しかし、遠方に、そして僻地となると近くに営業所を持っている引越し業者さんが限られてきます。サービスが良くて料金もリーズナブルなところを比較サイトで検討することが難しいことを初めて知りました。

知らない土地での家探し

神社から見る三木里の街並み

話は遡りますが、知らない土地で理想の家探しをするのは心配も多いものです。
管理人は、地域おこし協力隊という制度を使って住みたいと思っていたエリアに住居を見つけてもらえたのが大変ラッキーでした。
地方暮らし、移住というと都会と違って広い土地が安易に見つかったりしそうにも感じますが、交通インフラの導入が遅れた東紀州のような土地では、車社会になる前に街並みができており、車が通行可能な道幅が確保されていないところが多いです。今となっては車なしでは生活は成り立たないのですが、駐車場が敷地内に確保できないのがほぼ当たり前なのです。特に尾鷲というところは、漁師町であることや台風シーズンへの備えとして家と家がぴったりと隣接した建て方となっており、駐車場どころか庭のある家も少ないのが現状です。
どんなところで、どんな暮らしがしたいのか、移住場所を決めるにあたっては、地域の特性と自分の思い描いている暮らしの両方の視点から場所探し物件探しをすることをオススメします。
ちなみに管理人は、庭付き畑つきの平屋という理想に近い物件で暮らしています。着任するする予定の空き家バンクで、タイミングよく今の家が登録されトントンと話が進みました。不動産との出会いは本当に縁だと感じる瞬間でした。

三木里を選んだ理由

管理人が一緒に遊ばせてもらっている山の畑「まくれば」。

以前の投稿にも記しましたが、管理人はこれからの暮らし方を考えるため仕事を辞め人生の夏休みを儲けました。東京暮らしで、次の一歩が踏み出せないまま訪れた熊野古道伊勢路の中で、求めていた暮らしができそうな可能性を垣間見たのがこの土地でした。

白浜に黒松の松林が美しい日本の「The 海水浴場」を有すること。伊勢路一と言われる難所の八鬼山を下った麓の里にこの白浜が現れるロケーション。そして、山側の海ビューに連なる石垣の段々畑。地元では、山の畑のある場所を「まくれば」と呼んでいますが、ここで日本蜜蜂を育てながら秘密基地を楽しむまくればの主人との出会いが大きなきっかけとなりました。東紀州は、鹿やイノシシ、猿などの獣害被害が多く、作物を育てるには獣害柵によるガードが必須です。管理人が初めてこのまくればを訪れた時は、山の畑(元は田んぼ)の中に真新しい農道が設置されたばかりの頃でした。まくればの主人が開拓を始めた頃は50年の間、耕作放棄された田が雑木林のジャングルと化しており、道具を担ぎ山道を歩いてこの場所まで通っていたとかで、楽しみのためとはいえ、ハードルの高いことです。農道設置のお陰で車で行けるようにはなっていたものの、この時点(2019年3月)では獣害柵が設置されておらず日本蜜蜂を育てるのみの秘密基地でした。それが、管理人が引越しを終えた2019年10月にはぐるりとまくればを囲む素晴らしい獣害柵が設置され、あとは畑として耕すばかりとなっておりました。
このように、様々な偶然が重なり絶妙のタイミングで面白い人々との出会いに導かれるようにして移住生活は始まりました。

移住先での仕事探し

尾鷲市朝日町にある「おわせ暮らしサポートセンター」。空き家バンクを運営しています。

管理人は、初めて訪れた東紀州の魅力に触れ、根ざすべき土地を求め1ヶ月あまりフラフラと三木里町や紀北町の長島付近を徘徊していました。まさに夏休み気分です。
そんな中、知り合った方々から「地域おこし協力隊」という制度があるので調べてみるよう促されます。管理人は漠然と地域の情報を収集しつつ、起業することを考えていたのですが(なかなか雇ってもらえる年齢ではないので。。)、地元に地縁のないよそ者が、何かを始めるのは確かに時間が掛かると思い至ります。しかし、「地域おこし協力隊」って若い人が使う制度でしょ。。くらいに思っていたので、応募するには心の葛藤がありました。でも、周りがいうんです。協力隊になっておけば、行政との距離も近づくし、何より名刺がわりになると。田舎では、何者であるかがとても重要で、どこかの繋がり、誰かの知り合いであることが安心に繋がるのだと力説されました。なので、〆切ギリギリに飛び込みましたよ。まさに清水の舞台から飛び降りる心持ちです。書類審査で99%落ちると思ってました。笑。
とはいうものの、空き家バンクを通して、後々の起業のための情報収集やネットワークづくり、物件探しができるというしたたかな目論見が背中を押しての応募でした。
結果はなんとあっけなく合格。ミッションは定住移住担当ということで、行政の空き家バンクを運営しつつ、コンシェルジュとして移住のワンストップ窓口となること。まさに自分が移住者ですから、同じ目線でお話ができるというものです。

私の場合、仕事は「地域おこし協力隊」という選択をしました。移住相談を受ける中でも協力隊という選択肢は提案させてもらっています。ただし、任期は最長3年です。足がかりを作って地域で生業を作り出すための国の地方創生政策です。尾鷲には他にもこの地ならではの紀州備長炭を焼く仕事や漁師さんになって大敷という組織で働く方法など、住まい探しと合わせて仕事の情報提供も行なっています。とはいえ地方は、都会より事業社数が少ないので、サラリーマン的な求人数は少ないのが事実です。仕事とプライベートをはっきり区別せず、暮らすこと、生きることの延長線上に仕事もあると考え、もらい仕事的にちょこちょこバイトを掛け持つ方法などで現金収入の確保をすることも選択肢の1つとするくらいの柔軟性が必要です。

知っておきたいこと

網で囲った鳥かご畑を外から眺めるお猿。人間が檻の中。。

最後にこの場所に引越しをして「へぇ〜〜〜」っと思ったことをまとめておきますね。

<TV・インターネット回線>
管理人が長らく生活していた場所では、NHKやケーブルTV以外のTV放送にお金が掛かるということはありませんでした。しかし、インフラの遅れている地域では、ケーブルテレビしか回線がありません。っということはフツーにTVを観るにも回線使用料が必要になります。これには驚きました。ネット接続もNTTの光回線などは使用できないエリアもあり、ケーブルTV回線にお世話になることになります。事前調査をくれぐれもお忘れなく。

<下水道>
尾鷲市は、生活インフラも遅れを取っています。都内では上下水道が当たり前でしたが、ここでは上水道のみです。7割型が汲み取り式のボットン便所です。水洗トイレにするには浄化槽を設置する必要があります。ボットンだけど洋便器にウォシュレットも完備した簡易水洗というのもあります。管理人は子供時代にボットンを経験していたので、あまり抵抗は感じなかったものの、この問題がクリアできないと家探しはなかなか難しいものとなります。

<山水・外流し>
尾鷲の中でも限られた地域ですが、上水道とは別に地域の管理組合により山水を引いているエリアがあります。山菜のアク抜きに一昼夜出しっ放しで使ったり、洗い物をしたり大変便利なシステムです。また、大概の家にはキッチンとは別に外流しが併設されています。家庭で魚を捌く機会の多いエリアならではですが、これがまた大変便利です。そして、釣りをする方が多いせいか魚を捌く男性が多いのも素晴らしい文化です。

<プロパンガス>
これまた、生活インフラですが、都市ガス普及率が0%ですので、大概の家庭ではプロパンガスを使用しています。都市ガスと比べてコストパフォーマンスに劣る傾向にあります。そのため、お風呂を電気給湯器にしていたり灯油のボイラーにしている家庭もあります。灯油が一番コストパフォーマンスに優れていますが、初期費用が掛かるのが難点でしょうか。

<獣害被害>
尾鷲だけでなく東紀州全体で獣害被害が年々増え続けています。山の管理が行き届かず、山と里の間の緩衝帯が減少しているのが原因とも言われています。三木里でも鹿やイノシシ、猿などが、作物を荒らします。鹿はなんでも食べるので獣害対策をしていないとガーデニングもままなりません。山の畑まくれば以外に庭でも小さな畑をしていますが、こちらは鳥かご畑となっているので、中で野良仕事をしていると夏みかんを食べながら猿に見られるという動物園とは逆の光景に苦笑いがこぼれます。

<交通インフラ>
アクセスの厳しさを度々お伝えしていますが、公共交通機関は本数が少ないです。単線の汽車JR紀勢本線は、中心部の「尾鷲駅」でも朝の7時台に2本。そのほかの時間帯は1〜2時間に1本です。特急の止まらないローカル駅の三木里では日に10本といったところ。市街地から浦々を繋ぐバス便も日に4本という本数です。
公共交通機関を使用するには計画性が重要です。そして自家用車が欠かせません。それもすれ違うことが難しい路地が多いので小型車をオススメします。
そうそう、汽車の本数は少ないのですが、車で1時間ちょっとの伊勢中川駅から近鉄線を利用すると名古屋まで1時間20分くらい、それも10分間隔で電車がくるので東京への日帰りも可能です!

いかがでしたか?
移住には、物件との出会いもありますが、人との出会いもとっても重要だと思います。新しい土地で自分はどんなことができるのかを考えてみることから初めてみてみてはいかがでしょう。

それでは、それでは、hasta luego!!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です